ヤングケアラー問題-1


政府広報オンライン
あなたのお子さんは大丈夫?スマホ、携帯にご注意を!ネット犯罪の落とし穴

  インターネットを悪用した犯罪に、子供が巻き込まれる例が後を絶ちません。ここ数年は、出会い系サイトに係る犯罪のほかに、コミュニティサイトを悪用して、児童買春や児童ポルノなど、子供の心身を狙った重大かつ悪質な犯罪の発生が目立っています。また、子供が被害を受けるばかりでなく、子供自身が加害者となって犯罪にかかわってしまうこともあります。ここでは、子供が狙われるネット犯罪の現状と防止策を紹介します。

1.後を絶たない、子供のネット犯罪被害-スマホ、コミュニティサイトに係る被害者数が増加傾向に
  携帯電話やスマートフォン(以下「スマホ」といいます)を利用している子供の割合は、中学生で約6割、高校生では9割以上に達しています。特に近年は、スマホの急速な普及により、従来型の携帯電話よりスマホを利用している割合が高くなっています。
  スマホは、様々なアプリケーション(以下、アプリといいます)をインストールすることで、通話やメールなどの通信機能のほか、地図やカメラ、動画再生、無料通話、ゲームなどパソコンと同じような様々な機能を使うことができます。使いやすく多機能なうえに小型軽量という、非常に便利な情報端末です。
しかし一方で、こうしたスマホを悪用する例が絶えないという現状をご存じでしょうか。
  その代表ともいえるのが、出会い系サイトやコミュニティサイト(※2)などを利用した犯罪です。出会い系サイトコミュニティサイトを悪用した犯罪の被害にあった18歳未満の子供(児童)の数は、平成21年の1,600人弱から平成24年は1,300人弱へと減る傾向にありましたが、平成25年以降は再び上昇に転じ、平成27年は1,745人となっています。
  サイトの種類ごとにみると、出会い系サイトに係る被害を受けた子供の数は、平成21年の453人から平成27年の93人へと減少傾向にありますが、他方で、コミュニティサイトに係る被害を受けた子供の数は、増減を繰り返しながらも毎年1,000人を超えています。
 1 出会い系サイト:電子掲示板や電子メール等の機能を用いて、交際を希望する面識のない異性同士の交流をとりもつことをはかるウェブサイト。
 2 コミュニティサイト:電子掲示板や電子メール等の機能を用いて、興味や関心が共通する人同士が情報交換できるウェブサイト全般をいう。SNSや無料通話アプリなどが含まれる。
  SNSとは、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(Social Networking Service)の略で、登録された利用者同士が交流できるウェブサイト上の会員制サービス。友人同士や、同じ趣味を持つ人同士が集まったりするなど、ある程度閉ざされた世界にすることで、利用者間の密接なコミュニケーションができる。
  無料通話アプリとは、アプリの利用者間で、無料で通話やメッセージのやりとりなどができるもの。

  平成27年中の罪種別のデータをみると、青少年保護育成条例違反(18歳未満の子供に対する淫行などを含む)や児童ポルノ、児童買春、児童福祉法違反などが並んでおり、金銭や品物でなく、児童の心身そのものが狙われているといえます。
  また、被害児童がコミュニティサイトにアクセスする際に利用した端末については、携帯電話(スマホを含む)が全体の9割近くにも達しており、特に、スマホからアクセスした児童は、平成27年には携帯電話全体の97.5%を占めています。

  最近の子供たちは、生まれたときから身近に携帯電話やインターネットがあった世代です。そのため、「使い慣れているはず」「インターネットの危険性についても知っているはず」などと考えがちですが、子供がインターネットの世界で守らなければならないルール、人と人とが付き合う上でのマナーについての経験、知恵を十分に備えているとは限りません。
  経験、常識、判断力を備えたはずの成人でさえ、インターネットに係る犯罪に巻き込まれることは少なくありません。まして、社会経験の浅い子供では被害に遭うおそれが高いことは言うまでもありません。さらに、社会のモラルやルールが十分に身についていない子供ならば、被害者となる危険はもとより、知らぬ間に犯罪にかかわってしまう危険もあります。次代を担う大切な子供たちが犯罪に巻き込まれたりかかわったりしないよう、インターネットとどのように付き合っているか、あらためてお子さんの話を聞いてみてはいかがでしょうか。
2.どんな犯罪被害が起きているの?-児童買春や児童ポルノなどの被害が発生しています。
  子供のインターネット利用に伴う危険には、以下のようなものもあります。

インターネット上の危険
 危険1 子供の健全育成に有害な情報が氾濫している
   インターネット上には、子供に見せることが好ましくない情報、例えば、犯罪や自殺を誘うような内容、過激な性描写、殺人などの残虐な暴力シーンを含む画像や動画が氾濫しています。
 危険2 相手の顔が見えない
   インターネットでは、様々な人とつながることができますが、相手の本当の姿は分かりません。中には、性別や顔、名前や年齢を偽って、言葉巧みに子供に近づこうとする悪い人がいます。
 危険3 一度発信した情報は不特定多数の人に広がり、後から削除することはほとんど不可能
   インターネット上では、一度掲示板などに書き込みを行うと、その内容はすぐに広まります。つまり、気軽に書き込んだり掲載したりした情報や画像などであっても、意図せず不特定多数の人に広がってしまうという特徴があり、いったんネット上に拡散した情報を後からすべて削除することは、ほとんど不可能です
 危険4 インターネットでの情報発信は個人を特定できる可能性がある
   インターネット上での情報発信は、匿名のつもりでも、ふとした書き込みなどから個人を特定することが比較的容易にできることがあります。自画撮りした画像に位置情報が入っていたり、地域を特定されやすい背景や学校の制服が写りこんだりするなど、意図せずに個人が特定され、トラブルや事件に巻き込まれる可能性もあるので注意が必要です。
次に、インターネットを利用した子供の犯罪被害事例を紹介します
 (こんな犯罪被害が発生しています)
 自画撮り画像を送信-女子中学生は、コミュニティサイトで知り合った男に、連絡先と顔写真をばらまくと脅かされて、自分の裸の画像を送信させられた。
 危険な出会い-女子中学生は、コミュニティサイトで知り合った男に、言葉巧みに衣類を買い与える約束で誘い出され、ホテルでわいせつな行為をされた。
 彼氏に撮られた裸の写真が同級生にも(児童ポルノ(製造、提供)被害)-女子高校生は、交際相手の男に携帯電話で裸の写真を撮られた。その後、女子高校生から別れ話をもちかけると、男は復讐するつもりで女子高生の同級生にその画像を送りつけ、その結果、同級生の間で無料通話アプリなどを通じて画像がやり取りされ、出回ってしまった。
リベンジポルノ防止法(私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律):
 リベンジポルノ防止法は、平成26年12月から施行されており、こうした事案はリベンジポルノ防止法に違反している疑いもあります。
 ゲーム機でも被害に!-女子小学生は、インターネット接続が可能な携帯ゲーム機のゲーム内で知り合った「女性」に、裸の画像の交換を要求され、自分の裸の画像を送信させられていた。この女性は、男がなりすましていた
 男子も被害に!-男子中学生は、コミュニティサイトで知り合った男と実際に会った結果、わいせつな行為をされ、その様子をデジタルカメラで撮影された。その後、その男から「学校にばらす」等と脅された。
3.子供が加害者になることもあるの?-業務妨害、不正アクセスなども。
  子供のインターネット利用が増える中、子供が加害者となる事例も珍しくありません。インタ-ネット上での悪口や無視、仲間はずれなどを行うケースから、SNSで呼び出して暴行に及ぶケースなど、態様が徐々にエスカレートすることがあります。書き込みの内容が原因となるトラブルや犯罪も多発しています。
  また、悪ふざけや冗談のつもりでとった安易な行為が犯罪であったり、お金欲しさに犯罪に手を染めてしまったりするケースも少なくありません。
(次に、子供による加害事例を紹介します。)
こんな非行・犯罪が発生しています
 多くの人の注目を浴びたくて-少年は、スーパーの店内において、パンや菓子の包装紙にいたずらをする様子を投稿した。投稿した動画に対する反響などを見て、自分を英雄視していた。
 びっくりすると思って-少年らは、スマホから自動的に110番するウイルスを作成した後にインターネットに拡散させて、スマホ使用者が意図しない110番発信を全国で多数発生させた。
 自分の技術を自慢したくて-少年は、中学・高校の生徒の成績などをインターネット上で管理するシステムにアクセスし、生徒の名前や住所、成績などの大量の情報を不正に盗み出した。
 子供が誘うのも犯罪!-女子高校生は、出会い系サイトに自分の年齢や容ぼうを記載し、「買い物や映画に連れて行ってほしい。お小遣いをもらいたい」などと書き込み、金品を受け取ることを示して人を児童との異性交際の相手方となるように誘引した
4.子供がインターネットを安全、適切に利用するには?
  (まずは親子でネット利用のルールをつくり、見守りを。)
  インターネットの世界でも実社会と同じように、守らなければならない法律やルールがありますし、人と人とが付き合う上でのマナーやモラルを守ることも必要です。子供たちは、スマホ等の機器を巧みに使いこなしますが、インターネット上の法律やルール、社会の中でのマナーやモラル等の知識や経験が十分に身についているとは限りません。
  また、前述したとおり、インターネットの世界は匿名性が高いように見えますが、実際には、様々な情報から比較的容易に個人が特定されてしまうということが十分にあり得ます。その危険性について、子供たちが十分に理解しているとは限りません。
  インターネットの適切な利用については、子供に対し、指導や注意をきちんとしている学校や保護者もいるでしょうが、他方で、コミュニティサイトに係る犯罪被害に遭った子供のうち、約2割近くの子供が学校から、また約半分の子供が保護者から、注意や指導を何も受けていなかったと回答しています。
子供は成長とともに自立心が高まりますが、行き過ぎて学校や保護者の指導を受け入れにくくなることもあるでしょう。しかし、子供に安全に道路を歩くための交通ルールを教えるのと同様に、インターネットの危険性についても、子供に対しては、様々な方法で、繰り返し、丁寧に説明して、インターネットの適切な使い方を身につけさせることが重要です。
  それと合わせてフィルタリングを用いて子供に有害な情報を閲覧させないことがとても大事です。また、保護者が継続的に子供のインターネット利用を見守っていくことも大切です。子供に携帯電話やスマホ、タブレット端末などを持たせるときは、次のポイントを参考にしてください。
 (1)適切にインターネットを利用させる
   スマホ等を子供に持たせるときは、持たせ始めが肝心です。安易に与えるのではなく、「何のために必要なのか、どのように使うのか」について親子で目的やルールを話し合い、また、トラブルや過度な利用などを防ぐために、保護者の責務として、子供の利用状況をしっかりと確認しましょう。
インターネット上は、仲間内だけの空間ではなく、世界中の人が利用する「公共の場」であり、実社会でやっていけないことは、インターネット上でもやってはいけないということを理解させ、ルールやマナーを守って利用できるよう、保護者が指導することが大切です。
 (2)親子で家庭のルールをつくる
   保護者と子供で話し合い、インターネット利用について家庭内のルールをつくりましょう。
   例えば、インターネット上でゲームを利用したり、動画を見たりする場合、名前や住所、学校名などの個人情報を求められる場合があります。また、通信料以外の料金の支払いのために、保護者のクレジットカード番号の入力が求められることがあります。こうしたケースでは、個人情報はもとより、保護者のクレジットカード番号が悪用されれば大きな被害をこうむります。
   こうしたインターネットの危険な面についても、子供に丁寧に説明し、ルールを一方的に押しつけるのではなく、なぜ、そのルールが必要なのかを子供に理解させることが大切です。また、子供がルールを破ったときの対応も、事前に子供と決めておきましょう。
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2023.01.05-ヤングケアラーの実態調査-https://www.pref.oita.jp/uploaded/attachment/2137664.pdf
ヤングケアラーに関する実態調査について

1.目的
  ○ ヤングケアラーは、家庭内のデリケートな問題であることから表面化しづらく、また社会的な認知度も現時点において低い ため、周囲の大人のみならず、子ども自身も自覚がない場合が多いことで、適切な支援に結び付いていないことが課題。 ○ 経済財政運営と改革の基本方針2021(令和3年6月18日閣議決定)においても、「ヤングケアラーについて、早期発見・把 握、相談支援など支援策の推進、社会的認知度の向上などに取り組む。」とされている。 ○ 大分県内のヤングケアラーの実態を把握し、今後必要な支援施策の検討を行うため、大分県においてヤングケアラーに関す る実態調査を実施した。
2.調査概要
  (1)市町村要保護児童対策地域協議会における調査 各市町村の要保護児童対策地域協議会で共同管理台帳に登載しているヤングケアラーの数を調査(令和3年5月)。 ⇒ヤングケアラーとして共同管理台帳に登載されている件数:67件
  (2)先行調査 県内の学校教職員、福祉・医療の在宅サービス関係者、民生委員・児童委員、子ども食堂関係者等を抽出して、ヤングケ アラーとして認知している児童・生徒数、ケアの対象者及びその内容など、日常の業務で把握しているヤングケアラーの 状況を調査(令和3年7月~8月)。 ⇒先行調査からの推計:県内に約300人のヤングケアラーが存在
  (3)全体調査 公私立学校の小学校5年生から高等学校3年生の全児童・生徒(対象約8万人)に対して、ヤングケアラーとしての自覚、 ケアの対象者及びその内容・時期・頻度などの現況、相談先や求める支援など、ヤングケアラー自身の状況を調査(令和 3年10月~11月)。
ヤングケアラー等に関する実態調査 ~全体調査の主な結果①~
  ○ 世話をしている家族が「いる」と回答したのは、回答者全体で4.0%([参考]国調査 中2:5.7%、高2:4.1%)
  ○ 世話をしているため、やりたいけれどできていないことが「ある」と回答したのは、回答者全体で1.3%
  ○ 世話をしていることで、「学校に行きたくてもいけない」と回答したのは24人、「進路変更を考えざるを得ない」と回答し たのは40人など、深刻な影響を受けている児童・生徒も存在(重複回答あり) ※世話の内容の自由記載の例:「学校から帰ったらすぐに保育園に迎えに行かなければならないので休む時間がない」 「体温や血圧の測定、薬の準備」、「アルバイトをして家計を支える」
ヤングケアラー等に関する実態調査 ~全体調査の主な結果②~
  ○ 一緒に世話をしている人がおらず「自分のみ」で世話をしていると回答したのが、世話をしている家族がいる者全体の14%
  ○ 世話を始めた年齢が「就学前」と回答したのが、世話をしている家族がいる者全体の5.6%
  ○ 1日当たりの世話時間が7時間以上と回答したのが、世話をしている家族がいる者全体の8.4%(平日)、20%(休日)
  ○ 学校や大人に助けてほしいことや手伝って欲しいことでは、「自由に使える時間が欲しい」が11.6% ※自由記載の例:「父親が家事や世話をするよう説得して欲しい」、「スーパーに一人で行くことが多いので手助けして欲しい」
  ○ 世話をしている家族別の世話をすることに感じているきつさでは、「兄弟姉妹」を世話している場合「特にきつさは感じてい ない」と回答した者が全体で72.4%で最も高い
ヤングケアラー等に関する実態調査 ~全体調査の主な結果③~
  ○ ヤングケアラーの認知度は低く、「聞いたことはない」と回答したのは、回答者全体で70.2%([参考]国調査 中2:84.2%、高2:86.8%)
  ○ 聞いたことがある人がヤングケアラーについて知ったきっかけは、「テレビ、新聞、ラジオ」がいずれの学校種でも最も高く、次いで 高いのは「学校」であった。

ヤングケアラーに関する実態調査の考察
  1.大分県内での支援が必要なヤングケアラーについて
     ○ 全体調査の結果、回答者全体の約1.3%が、世話をしているため、やりたいけれどできていないことが「ある」と回答し ている。
     ○ この結果を今回の調査対象者(小学校5年生~高校3年生:79,550人)に当てはめると、世話をしていることで困りごとを 抱えている児童・生徒が約1000人いることが推計される。
     ○ 特に、世話をしていることで、「学校に行きたくてもいけない」、「進路変更を考えざるを得ない」等の深刻な影響が出て いる児童・生徒も存在することから、早急な対応が求められる。
  2.周囲の気付きについて
     ○ 全体調査の結果、上記のとおり、世話をしていることで困りごとを抱えている児童・生徒が約1000人いることが推計さ れる。
     ○ 一方、市町村要保護児童対策地域協議会における調査でヤングケアラーとして共同管理台帳に登載されており既に支援につ ながっている件数が67件、先行調査で周囲の大人がヤングケアラーとして認識しているのが約300人であった。
     ○ これらの結果を比較すると、児童・生徒本人への調査で明らかになった世話をしていることで困りごとを抱えている児童・ 生徒の方が、市町村要保護児童対策地域協議会や周囲の大人が把握できているヤングケアラーの数よりもかなり多くなってい る。このことは、まさにヤングケアラーが家庭内のデリケートな問題であることから表面化しづらく、周囲の大人が気付きに くいということを示していると考えられる。
     ○ 全体調査の結果、ヤングケアラーの中には学校を欠席する、遅刻・早退する、睡眠不足である等の特徴が見られることもあ ることが分かったので、そういった特徴に留意して周囲の大人がヤングケアラーに気付けるような取り組みが必要である。
  3.ヤングケアラーの認知度
     ○ ヤングケアラーの認知度については、ヤングケアラーを聞いたことがないと答えた児童・生徒が、国の調査時点では中2で 84.2%、高2で86.8%だったのに対し、全体調査では全体で70.2%であったことから、国等がこれまで行ってき たヤングケアラーの周知活動に一定の効果があったものと思われる。
     ○ 全体調査の結果、ヤングケアラーについて知ったきっかけが「学校」という回答がいずれの学校種でも2番目に高かった。 このことから、今後ヤングケアラーの認知度を向上させるためには、児童・生徒にとって身近な学校を通じた周知活動も有効 であり、取り組んでいく必要がある。
     ○ なお、自由記載欄でも「(全体調査の)アンケートで初めて知った」という記載もあったことから、全体調査で悉皆調査を 行ったことも認知度の向上に繋がったと考えられる。


2021.4.12-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210412/k10012969771000.html
「ヤングケアラー」中学生の約17人に1人 国 初の実態調査

  家族の世話や介護などに追われる「ヤングケアラー」と呼ばれる子どもたち。その割合が、中学生のおよそ17人に1人に上ることが国の初めての実態調査で分かりました。

  家庭で、両親や祖父母、きょうだいの世話や介護などをしている子どもは「ヤングケアラー」と呼ばれ、厚生労働省と文部科学省は、去年12月からことし1月にかけて初めての実態調査を行いました。
  公立の中学校1000校と全日制の高校350校を抽出して2年生にインターネットでアンケートを行い、合わせておよそ1万3000人から回答を得ています。
  12日、国のプロジェクトチームの会合で調査結果が公表され、「世話をしている家族がいる」という生徒の割合は、中学生が5.7%でおよそ17人に1人、全日制の高校の生徒が4.1%でおよそ24人に1人でした。
  内容は、食事の準備や洗濯などの家事が多く、ほかにも、きょうだいを保育園に送迎したり、祖父母の介護や見守りをしたりと多岐にわたっています。
  世話にかけている時間は、平日1日の平均で、中学生が4時間、高校生は3.8時間でした。1日に7時間以上を世話に費やしている生徒が、1割を超えていたということです。
  「やりたくてもできないこと」を複数回答で尋ねたところ、中学生では「特にない」という回答が58%だった一方、「自分の時間が取れない」が20.1%、「宿題や勉強の時間が取れない」が16%、「睡眠が十分に取れない」と「友人と遊べない」がいずれも8.5%でした。
また、「進路の変更を考えざるをえないか、進路を変更した」という生徒が4.1%、「学校に行きたくても行けない」と答えた生徒が1.6%でした。
  一方で「相談した経験がない」という生徒が、中高生ともに6割を超えました。「誰かに相談するほどの悩みではないから」という理由が最も多く「相談しても状況が変わるとは思わない」という回答が続いています。
   プロジェクトチームは調査結果を踏まえ、来月までに支援策をまとめる方針です。
定時制や通信制の高校で割合高く
  今回、厚生労働省や文部科学省は、定時制や通信制の高校についても、規模を縮小したうえで調査を行っています。調査ではそれぞれの都道府県から1校ずつ抽出してインターネットでアンケートを行い、合わせておよそ800人から回答を得ました。
  その結果「世話をしている家族がいる」という生徒の割合は、定時制高校が8.5%でおよそ12人に1人、通信制高校が11%でおよそ9人に1人と、いずれも全日制の4.1%を上回っています。このうち通信制高校の生徒では、1日に7時間以上世話に費やしているという回答が24.5%を占めたということです。
  家族の世話をしている通信制の高校の生徒に「やりたくてもできないこと」を複数回答で尋ねたところ「自分の時間が取れない」が40.8%に上ったほか「友人と遊ぶことができない」が30.6%と、いずれも全日制の高校を大幅に上回りました。
  また「当初通っていた学校を辞めた」という生徒が12.2%、「アルバイトや仕事ができない」と答えた生徒が8.2%で、生活や学業に深刻な影響が出ています。
山本厚労副大臣「即効性のある対策を急ピッチで検討」
  山本厚生労働副大臣は、会合で「調査結果に衝撃を受けた。子どもらしい生活を送れず、誰にも相談できずに1人で耐えていることを想像すると、胸が締めつけられる思いになる。これまでヤングケアラーに着目した対策を打たなかったことが悔やまれるが、即効性のある対策を急ピッチで検討したい」と述べました。
加藤官房長官「実態踏まえ支援を検討」
  加藤官房長官は、午後の記者会見で「ヤングケアラーは、表面化しにくい構造になっていて、支援を検討するにあたっても、その実態を把握することがまず重要だ。今後、プロジェクトチームにおいて、調査結果も踏まえ、今後の支援に向けた論点や課題などを検討していくことにしている。政府として、実態も踏まえ、ヤングケアラーの支援について検討していく」と述べました。
小3から母親のケアをした女性は
  小学生のころから病気で体が動かない母親のケアをしたという女性は「当時は当たり前の生活と思っていました。つらいと思っても相談できる人もいなかったので、自分の気持ちを素直に話せる場所があればよかったと思います」と話しています。

  両親と兄の4人暮らしだった里衣さん(35)は、小学3年生、9歳の頃から、こう原病を患う母親のケアを担いました。高熱やおう吐などの症状が続き、薬を飲んでもよくならない母親を少しでも助けたいという思いからでした。父や兄とともに、自分にできることはすべてやろうと、洗濯物の取り込みや、スーパーでおかずを買って食事を準備するなど、学校から帰宅すると毎日行うようになりました。その後、母親の症状はど悪化し、体を動かすのが難しくなっていきました。
  里衣さんは、母親の話し相手にもなり、自分の感情を抑えて、いつも「いい子」でいるように努め、励まし続けたといいます。しかし、中学生の頃には、吐き気やふらつきなど、みずからの体調も悪くなり、高校1年生のときには、ストレスからくるいわゆる「過呼吸症候群」と診断され、学校を休むことも増えました。
  体調が悪くても母親のケアは続けましたが、この生活が当たり前だと思っていたため、学校の先生などに相談することはありませんでした。
  里衣さんは「体調が悪化した背景に何があるのか、先生から聞かれたことはなく、しんどいと言うと甘えているように受け取られ、相談する気力がなくなりました」と話しています。
  里衣さんは、おととし母親が66歳で亡くなるまで、24年間ケアを続けました。里衣さんは「『いちばんつらいのはお母さんだ』と周りの大人に言われることが多く、自分の気持ちをありのままに話せる場所がありませんでした。思ったことを素直に話せる場所があればよかったと思います」と話しています。
専門家「自覚ない子も支援を」
  ヤングケアラーの問題に詳しい大阪歯科大学の濱島淑恵教授は、今回の調査結果について「一定の割合でケアをしている子どもが全国にいると分かったことの意義は非常に大きい。ただ、まだヤングケアラーということばが浸透していない中で、自分が該当すると理解していない子どもも多く、本当はもっといるのではないかと考える必要があり、氷山の一角ではないか」と指摘しています。
  そのうえで「問題の背景には、子どもだけでなく、親などが抱える家庭の大変さがあり、教育と福祉の連携が必須だ。学校や福祉の専門職の人たちが子どもの理解者となってケアの負担などについて話を聞くことが大切で、子ども食堂や学習支援の活動の場などで、ヤングケアラーの視点を持って子どもたちを見てほしい」と話しています。
  そして国に求める支援については「教育と福祉のエアポケットにはまり、これまでの縦割りの制度では対応できなかったので、包括的な法制度を早急に検討する必要がある」と指摘しています。


NHK 首都圏ナビ
知ってほしい ヤングケアラー

  「ヤングケアラー」とは、家族の介護やケア、身の回りの世話を担う18歳未満の子どものことです。
  その生活が“当たり前”で、自身が「ヤングケアラー」という認識がないという子どもも少なくありません。
  まずは実態を知ってほしいという思いで、このページに記事をまとめます

  「ヤングケアラー」のこと知っていますか。
  介護する子どものことですが、何歳までを「ヤングケアラー」と呼ぶのか、定義は何なのか。
  誰のどんな介護やケアを担うのか、実態はさまざまです。
  自分が「ヤングケアラー」だと知らなかったという人も少なくないので、どんな人が「ヤングケアラー」なのかまとめました。
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ヤングケアラーとは
  厚生労働省などによりますと、「ヤングケアラーとは、年齢や成長の度合いに見合わない重い責任や負担を負って、本来、大人が担うような家族の介護やケア、身の回りの世話を担っている18歳未満の子どものことです。家族の中に介護を必要とする人がいる場合、それをサポートする大人がいないと、子どもが担わざるを得なくなります。
  具体的には、入浴やトイレの介助や身の回りの世話、それに買い物、料理、掃除、洗濯などの家事です。介護やケアが必要な人は、主に障害や病気のある親や祖父母が想定されますが、きょうだいやほかの親族の場合もあります。

こんな人がヤングケアラー
日本ケアラー連盟が、『こんな人がヤングケアラーです』と紹介している。
  障害や病気のある家族に代わり、買い物・料理・掃除・洗濯などの家事をしている。
  家族に代わり、幼いきょうだいの世話をしている。
  障害や病気のあるきょうだいの世話や見守りをしている。
  目を離せない家族の見守りや声かけなどの気づかいをしている。
  日本語が第一言語でない家族や障害のある家族のために通訳している。
  家計を支えるために労働をして、障害や病気のある家族を助けている。
  アルコール・薬物・ギャンブルなどの問題のある家族に対応している。
  がん・難病・精神疾患など慢性的な病気の家族の看病をしている。
  障害や病気のある家族の身の回りの世話をしている。
  障害や病気のある家族の入浴やトイレの介助をしている。
ヤングケアラーはどんな問題に直面?
  ヤングケアラーは家族の介護に追われることで、勉強時間や友人との時間が十分に取れなかったり、進路を変えざるを得なかったりする問題に直面するということです。
  しかし、家庭内での問題ということで、実態の把握が難しいうえ、当事者の子ども自身が、その生活が“当たり前”になっていて声を上げなかったり、困ったときにどこに助けを求めていいのか分からなかったりするケースも多く、表面化しづらくなっています。


ヤングケアラー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』


  ヤングケアラー(英語: young carer)とは、通学や仕事のかたわら、障害病気のある親や祖父母、年下のきょうだいなどの介護や世話をしている18歳未満の子どもを指す。
  家族の病気や障害のために、長期のサポートや介護、見守りを必要とし、それを支える人手が十分にない時には、子どもであってもその役割を引き受けて、家族の世話をする状況
が生じる。介護のために学業に遅れが出たり、進学や就職を諦めたりするケースもあるといい、実態の把握が急がれている。

概説
  成蹊大学文学部教授澁谷智子は、ヤングケアラーを 「家族にケアを要する人がいる場合に、大人が担うようなケア責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどを行っている、18歳未満の子ども」と定義している。
  ヤングケアラーの存在は知られていながら、人数や実態は長い間把握できていなかった。毎日新聞社が2020年3月に総務省の2017年就業構造基本調査を独自に分析し、家族などの介護を担っている15~19歳の若者は2017年時点で推計37,000人、そのうち約8割が通学しながら、週4日以上、勉強と介護を両立させていると明らかにした。15歳未満のヤングケアラーはこの分析には含まれておらず、実態はさらに多いとされる。

  三菱UFJリサーチ&コンサルティングが2019年に実施した「ヤングケアラーの実態に関する調査研究」によると、以下の実態が明らかになった。
   ・ヤングケアラーの家族構成は「ひとり親と子ども」が48.6%と最多。家族構成員の少なさから、介護にも協力をせざるを得ない状況がある。
   ・ヤングケアラーの学校生活への影響に関する設問では、「学校などにもあまり行けていない(休みがちなど)」と回答した人が31.2%。家族の介護が原因で「遅刻が多い」「授業に集中できない」「学校へ通ってはいるものの部活動に参加できない」など、学校へは通っているけれど何らかの支障があると感じている人も27.4%。
   ・「自分はヤングケアラーと認識していない」は44.5%、「わからない」が41.1%。8割以上の人が、自分自身をヤングケアラーと認識していない
   ・子どもが家庭で行っているケアを支援する人の有無については、「なし」が54.3%。学年別にみると、学年があがるにつれ「なし」の割合が高くなっている。半数以上のヤングケアラーが、支援者なしの孤立状態で介護を行っている
  上記調査では、ヤングケアラーである子どもは、本来守られるべき子ども自身の権利を守られていない子どもであるとして、以下の提言を行っている。
   ・「ヤングケアラー」の概念の周知と、「ヤングケアラー」に対する偏見等の払拭
   ・ケアすること自体を否定せず、「ヤングケアラー」の選択肢を広げられるような支援が必要
   ・「ヤングケアラー」を含めた家族支援に関する制度上の位置づけが必要
   ・子どもがケアを担わなくても済むような施策・対応の充実
   ・「ヤングケアラー」の子どものメンタル面へのサポートの必要性
   ・「ヤングケアラー」への支援は多層的に
自治体等の取組み
  ヤングケアラーの実態を把握しやすい立場にあるのは、ヤングケアラー本人が通っている学校の教師である。しかし、実際には多くの学校、教育委員会は、家庭のことは個人情報の問題もあり、本人から話がないと踏み込めないという方針が多い。当のヤングケアラーも、学校のような同質性の高い集団では、周囲に合わせるのが苦しくなってくること、友人たちに介護の話をしても、共感してもらうことは難しいことから、誰にも話せずに孤立を深めていく悪循環に陥ってしまう。こうしたことから実態把握が難しく、問題が表面化しにくい。立正大学教授の森田久美子は「学校がヤングケアラーを早く見つけ、家族の世話を託せる福祉サービスにつなぐことが必要だ」と指摘する。

  埼玉県では2020年3月、全国で初めてとなるヤングケアラーを支援するための条例「ケアラー支援条例」が成立した。学校や教育委員会に、ヤングケアラーと思われる児童、生徒の生活状況、支援の必要性の確認を義務づけ、相談に応じたり、支援機関に取り次いだりするものとしている。社会全体で支えることでケアラーの孤立を防ぐ仕組みづくりを目指すもので、ヤングケアラーの教育機会の確保も含まれている。

  厚生労働省は、2020年(令和2年)12月に初の実態調査を始める方針を固めた。同省は自治体や教育委員会などを通じ、該当する小中高生の人数や介護の内容を調べ、家族構成や学校生活などへの影響のほか、親が自分の世話をさせることで事実上のネグレクト(育児放棄)に当たる事例がないかどうかなども調べる。この調査の結果が2021年(令和3年)4月12日に公表され、全国の中学2年生の6%、高校2年生の4%がヤングケアラーに該当すると発表し、この2学年だけで約10万人に上ると推計している。世話をする家族がいる生徒にその続き柄を尋ねたところ、「きょうだい」が最多で中2が62%、高2が44%、「父母」は中2が24%、高2が30%だった。平日の世話にかかった時間は、1日平均で約4時間、7時間以上も1割に上り、このうち4人に1人が「健康状態がよくない」と回答した。調査結果を受けて政府は「政府として、しっかりと実態を踏まえ、ヤングケアラーの支援について検討していく考えだ」と述べた。
海外の状況
  オーストラリアでは27万2千人のヤングケアラーが存在すると推定されており、各州に支援団体が組織されている。 また、イギリスでは70万人のヤングケアラーが存在する。 各国でヤングケアラーの定義は異なり、オーストラリアでは25歳以下、イギリスでは18歳以下が対象となっている。


ヤングケアラー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

  ヤングケアラー英語: young carer)とは、病気障がいのある家族親族介護・面倒に忙殺されていて、本来受けるべき教育を受けられなかったり、同世代との人間関係を満足に構築出来なかった子どもたちのこと。大人が担うようなケア責任を引き受け、家族の世話全般(家事や介護、感情面、家計面のサポート)を行っている18歳未満の子どもを指す。その子どもがケアしている者は、主に障害や病気のあるや高齢の祖父母兄弟姉妹( ヤングケアラーがきょうだい児)などの親族である。
  手伝いの域を超える過度なケアが長期間続くと、心身に不調をきたしたり遅刻や欠席が増加するなど学校生活への影響も大きい。進学就職を断念するなど子どもの将来を左右してしまう事例もあるとされる。
概説
  成蹊大学文学部教授の澁谷智子は、ヤングケアラーを 「家族にケアを要する人がいる場合に、大人が担うようなケア責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面、家計支援のサポートなどを行っている、18歳未満の子ども」と定義している。
  ヤングケアラーの年齢は国によって異なる。公的サポートの対象とされるヤングケアラーは、イギリスでは18歳未満となっている。16歳以上で、フルタイムの教育を受けていない場合は、仕事探しの公的支援を受ける資格がある。オーストラリアでは25歳までとされる。
  日本では、ヤングケアラーの法律上の定義は存在せず、研究者等の定義から18歳未満の子どもとされるのが一般であるが、一般社団法人日本ケアラー連盟は、これに加えて、18歳~おおむね30歳代までのケアラーを「若者ケアラー」と定義している。
  ヤングケアラーの存在自体は周囲の人に「病気や障がいのある親族を見ている存在」としては知られていながら、その人数や実態は長い間把握できていなかった。毎日新聞社が2020年3月に総務省の2017年就業構造基本調査を独自に分析し、15歳未満のヤングケアラーはこの分析には含まれてないが、家族などの介護を担っている15~19歳の若者は2017年時点で推計37,000人おり、そのうち約8割が通学しながら、週4日以上、勉強と介護を両立させていると明らかにした。

  三菱UFJリサーチ&コンサルティングが2019年に実施した「ヤングケアラーの実態に関する調査研究」によると、以下の実態が明らかになった。
   ・ヤングケアラーの家族構成は「ひとり親と子ども」が48.6%と最多。家族構成員の少なさから、介護にも協力をせざるを得ない状況がある。
   ・ヤングケアラーの学校生活への影響に関する設問では、「学校などにもあまり行けていない(休みがちなど)」と回答した人が31.2%。家族の介護が原因で「遅刻が多い」「授業に集中できない」「学校へ通ってはいるものの部活動に参加できない」など、学校へは通っているけれど何らかの支障があると感じている人も27.4%
   ・「自分はヤングケアラーと認識していない」は44.5%、「わからない」が41.1%。8割以上の人が、自分自身をヤングケアラーと認識していない。
   ・子どもが家庭で行っているケアを支援する人の有無については、「なし」が54.3%。学年別にみると、学年があがるにつれ「なし」の割合が高くなっている。半数以上のヤングケアラーが、支援者なしの孤立状態で介護を行っている。
上記調査では、ヤングケアラーである子どもは、本来守られるべき子ども自身の権利を守られていない子どもであるとして、以下の提言を行っている。
   ・「ヤングケアラー」の概念の周知と、「ヤングケアラー」に対する偏見等の払拭
   ・ケアすること自体を否定せず、「ヤングケアラー」の選択肢を広げられるような支援が必要
   ・「ヤングケアラー」を含めた家族支援に関する制度上の位置づけが必要
   ・どもがケアを担わなくても済むような施策・対応の充実
   ・「ヤングケアラー」の子どものメンタル面へのサポートの必要性
   ・「ヤングケアラー」への支援は多層的
基本的に教育を普通に受けられる環境にあり、その中で親の経済力の差競い合う人々以外にも、それをも下回る教育を受ける以前の環境にある人々も親ガチャという言葉を使う。親の貧困や虐待、家族やきょうだい児としての介護を強いられるヤングケアラーなど親のせいでの負の要素でスタート地点にすら立てない者たちである。
対策
日本
 相談窓口
   2021年5月17日、福祉・介護・医療・教育の連携プロジェクトチームがSNSなどに相談窓口を増設するなどの対策案をまとめた。
   以前からも、日本政府では、ヤングケアラーについて(厚生労働省)、児童相談所相談専用ダイヤル(189)、24時間子供SOSダイヤル(文部科学省)、子どもの人権110番(法務省)などにおいて、サポートを行ってきた。
   また、各都道府県においても、ヤングケアラー相談窓口(鳥取県福祉相談センター)や神戸市福祉センターなどの形で相談を受け付けている
 オンラインコミュニティー
   2020年4月22日にヤングケアラー・若者ケアラー同士が交流できるオンラインコミュニティーである(ヤンクルコミュニティ)の運営が開始された。2022年1月現在200人以上のヤングケアラー・若者ケアラーが登録している日本最大のオンラインコミュニティー。
   Yancle communityを運営するのは宮崎成悟が代表を務める一般社団法人ヤングケアラー協会である。ヤングケアラー協会はオンラインコミュニティーの運営以外にも就職支援(Yancle株式会社の事業を継承)やヤングケアラーの自分史制作を行っている。
 自治体や政府の取組み
  ヤングケアラーの実態を把握しやすい立場にあるのは、ヤングケアラー本人が通っている学校の教師である。しかし、実際には多くの学校、教育委員会は、家庭のことは個人情報の問題もあり、本人から話がないと踏み込めないという方針が多い当のヤングケアラーも、学校のような同質性の高い集団では、周囲に合わせるのが苦しくなってくること、友人たちに介護の話をしても、共感してもらうことは難しいことから、誰にも話せずに孤立を深めていく悪循環に陥ってしまう。こうしたことから実態把握が難しく、問題が表面化しにくい。立正大学教授の森田久美子は「学校がヤングケアラーを早く見つけ、家族の世話を託せる福祉サービスにつなぐことが必要だ」と指摘する。

  埼玉県では2020年3月、全国で初めてとなるヤングケアラーを支援するための条例「ケアラー支援条例」が成立した。学校や教育委員会に、ヤングケアラーと思われる児童、生徒の生活状況、支援の必要性の確認を義務づけ、相談に応じたり、支援機関に取り次いだりするものとしている。具体的には、教育機関等による支援体制の構築(高校や中学校への出張授業)、地域における支援体制の構築(オンラインサロンの開催など)が挙げられる。
  また、11月はケアラー月間と定められ、中学生や高校生に向けて「ヤングケアラーってなに?」というハンドブックも配られた。社会全体で支えることでケアラーの孤立を防ぐ仕組みづくりを目指すもので、ヤングケアラーの教育機会の確保も含まれている。
  2021年3月には、埼玉県ケアラー支援計画が策定・公表された。計画で取り上げられた主な課題(1)社会的認知度の向上(2)情報提供と相談体制の整備(3)孤立の防止(4)支援を担う関係機関等の人材の育成(5)ヤングケアラーの支援体制の構築、である。そして基本目標は、(1)ケアラーを支えるための構築(2)行政におけるケアラー支援体制の構築(3)地域におけるケアラー支援体制の構築(4)ケアラーを支える人々の育成(5)ヤングケアラー支援体制の構築・強化である。
  北海道栗山町では、2010年(平成22年)に日本ケアラー連盟から全国5地区(東京都杉並区、新潟県南魚沼市、静岡県静岡市、京都府京都市、北海道栗山町)におけるケアラー実態調査の協力依頼を栗山町社会福祉協議会(以下社会福祉協議会)が受けたことがきっかけに、2012年にケアラー手帳が作成された。
  ケアラー手帳は、ケアラーと地域をつなぐツールとして活用され、以下のことを記載している。(1)ケアラーの定義と、その精神的サポート(2)体験談。事例集(3)自己分析(4)介護技術・福祉用具の紹介(5)相談窓口・サービスの事業所紹介(6)困ったときの対応方法(相談先のピックアップ)(7)災害と地域ネットワーク(8)ケアラーズカフェ「サンタの笑顔(ほほえみ)」の紹介。さらに栗山町では、2021年(令和3年)4月1日より「ケアラー支援条例」を施行。
  三重県名張市では、2021年(令和3年)5月19日より「ケアラー支援の推進に関する条例」を施行。岡山県総社市では、2021年(令和3年)9月9日より「ケアラー支援の推進に関する条例」施行。
  茨城県では、2021年(令和3年)12月14日より「ケアラー・ヤングケアラーを支援し、共に生きやすい社会を実現するための条例」施行。岡山県備前市では、2021年(令和3年)12月24日「ケアラー支援の推進に関する条例」施行。
  福岡県福岡市では、2021年(令和3年)11月15日、ヤングケアラー専用相談窓口をNPO法人「SOS子どもの村JAPAN」に設置。同法人のコーディネータが、ヤングケアラー本人やきょうだい、保護者、親族などの相談を受け付け、電話でも対応内容に応じ、必要な支援をしたり、関連サポートを紹介したりする。市によると、九州の自治体によるヤングケアラーを対象にした専門相談窓口は初めてとみられる。
  兵庫県では、ケアラー支援に関する検討委員会が行われた。(令和3年9月7日第1回)座長は大阪歯科大学利用保健学部の教授の濱島淑恵である。このケアラー支援に関する検討委員会は4回にわたる審議を行い、推進方策を取りまとめた。この兵庫県の検討委員会はケアラー・ヤングケアラーの支援者や経験者からのヒアリングを実施するとともに、早期発見、悩みの相談支援、福祉サービスへの円滑なつなぎ、資料や関係機関との連携強化等について議論を重ね推進方策を取りまとめた。これらの活動推進事業補助金は、令和4年度より、当事者が悩みや経験をともに教諭、情報交換ができる場づくりを促進するため、ピアサポート等の交流活動に取り組む団体の活動を支援する補助金事業を実施することによって生み出している。
  大阪府は、令和4年3月に、ヤングケアラー支援を進める必要があるとの認識のもと、市町村や事業者、学校とも連携した取り組みが進められるよう、府の施策の方向性と具体的取り組みを示すため、指針を策定しました。また、府立高校におけるヤングケアラーが適切な支援を受けることができるよう、また、生活実態や家族のケアによる学校生活への影響、支援ニーズ等を把握するため調査を実施した。大阪市で、ヤングケアラー支援に向けたプロジェクトチーム会議(令和3年5月11日第1回)が開催されたりするなど、ヤングケアラーに対する自治体による支援の検討が続いている。

  厚生労働省文部科学省は、2020年(令和2年)12月から2021年(令和3年)1月にかけて初の実態調査を行い、その結果が、2021年(令和3年)4月12日に「ヤングケアラーの支援に向けた福祉・介護・医療・教育の連携プロジェクトチーム」第2回会議で公表された。「世話をしている家族がいる」という生徒の割合は、中学生が5.7%でおよそ17人に1人、全日制の高校の生徒が4.1%でおよそ24人に1人であること。内容は、食事の準備や洗濯などの家事が多く、ほかにも、きょうだいを保育園に送迎したり、祖父母の介護や見守りをしたりと多岐にわたること。世話にかけている時間は、平日1日の平均で、中学生が4時間、高校生は3.8時間で、1日に7時間以上を世話に費やしている生徒も、1割を超えていたことが明らかにされた。調査結果を受けて政府は「政府として、しっかりと実態を踏まえ、ヤングケアラーの支援について検討していく考えだ」と述べた。厚生労働省の調査研究事業として実施された令和3年度ヤングケアラーの実態に関する調査研究では、「家族の世話をしている」と回答した小学6年生は6.5%(約15人に1人)に上り、「世話をしている家族がいない」人に比べて、健康状態が「よくない・あまりよくない」、遅刻や早退を「たまにする・よくする」と回答する割合が2倍前後高くなっており、健康状態や学校生活への影響が懸念される。

  世界のヤングケアラー支援状況を、支援レベルに応じて段階的に記したものである(2016年(平成28年)掲載)。最上位の支援レベルであるレベル1「持続的な支援が講じられている」に該当する国は未だに存在しない。
  レベル2「先進的な支援が講じられている」に該当するイギリスは、ヤングケアラー支援の先進国と言われる。70万人ものヤングケアラーが存在するイギリスでは、50年以上も前からケアラー運動が行われており、その活動の一つとして1995年(平成8年)に制定されたケアラー法がある。
  ケアラー法では、介護者の権利の擁護や強化を謳い、それに基づいて様々なサービスが整備されている。また、ケアラー法はヤングケアラーに対するサポート・サービスを現代社会に対応すべく、制定後も何度も改定を行っている(最新の改定は2014年(平成26年)の「ケア法」)。具体的な取り組みとしては、学校の放課後にケアラーの子たちを集めて話し合いの場を作り、ケアラーの子たちの心の支えになる取り組みが行われている。
  次にヤングケアラーに対する支援状況が整いつつあると言われているのは、支援レベル3「中程度の支援が講じられている」に該当するオーストラリアノルウェースウェーデンである。その中、オーストラリアでは27万2千人のヤングケアラーが存在すると推定されており、各州に支援団体が組織されている。歴史的に、連邦政府と州政府の役割分担が行われている。また、オーストラリア連邦政府に制定される「高齢者ケア法」(1997年制定:高齢者ケア構造改革)でも、ヤングケアラー支援が「施設ケア」「住宅ケア」と共に介護をめぐる重要な柱として位置付けられた。2010年(平成22年)には介護者の存在と権利が明文化とした「ケアラー承認法」ケアラー貢献認識法)が、全ての州にて法律として制定された。
  各国でヤングケアラーの定義は異なり、イギリスでは18歳未満、オーストラリアでは25歳までが対象となっている。







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